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主系列段階後の進化
中心で全ての水素がヘリウムに変えられてしまうと、重力収縮によって中心温度と中心密度が大きくなっていきます。 温度が 1 億度程度になると、ヘリウムから炭素酸素が作られる核融合反応が起こり始めます。 このエネルギー発生により、重力収縮が止められ、ヘリウム燃焼段階へと移行します。 中心でヘリウムがなくなると、また重力収縮が起こり、中心温度と中心密度が上昇します。 このように、重力収縮と核融合の繰り返しで進化が進んでいきます。 しかし恒星質量が比較的小さな場合、電子の縮退が強くなり、温度が上昇しなくなります。 よってヘリウム燃焼段階後、白色矮星に進化します。 質量が十分大きいと、中心で鉄ができるまで核融合反応が進み、最後には超新星爆発を起こします。 このように、初期の質量によって、恒星の進化は大きく異なります。 次の図は、種々の質量を持って生まれた恒星の、中心密度と温度の変化を示したものです。

Iben (1991) より。
また次の図は、\(1M_\odot, 5 M_\odot, 25 M_\odot\) の質量を持つ恒星の HR 図上での進化経路を詳細に描いたものです。

Iben (1991) より。
ヘリウム燃焼段階
中心付近の水素がヘリウムに全て変えられてしまうと、水素からヘリウムへの核融合反応は、ヘリウム核を包む殻部分で起きるようになります。 このような構造を持つ星は、中心が重力収縮すると、ヘリウム核の周りの水素燃焼が活発になります。 その影響で外層は膨張するため、主系列を離れて巨星へと進化していきます。 ほとんどヘリウムからなる中心核が重力収縮を起こし、中心温度が 1 億度程度になると、3 個のヘリウム原子核が 1 個の炭素原子核となるトリプルアルファ反応が起こり始めます。 そのエネルギー発生により中心核の収縮が止まり、ヘリウム燃焼段階となります。 この段階では、トリプルアルファ反応によりできた炭素が、ヘリウムと融合して酸素が作られる反応も同時に起こります。 よって、ヘリウム燃焼段階が終わった段階では、炭素と酸素からなる中心核が残ります。
\(M > 15 M_\odot\) の大質量星では、主系列段階が終わった時の中心温度が高いため、あまり重力収縮をしなくてもトリプルアルファ反応が起こる温度に到達します。 故に、赤色巨星になる前にヘリウム燃焼段階が始まります。 それよりも質量の小さな恒星では、赤色巨星になった後でヘリウム燃焼段階が始まります。 中質量星 \((3 M_\odot \lesssim M \lesssim 15 M_\odot)\) は、ヘリウム燃焼段階で HR 図上に横に伸びるループを描きます。 このルーrpうは質量が大きいほど長く発達する特徴を持ちます。 それが \(\log T \sim 3.8\) よりも高温領域に伸びると、セファイド不安定帯を横切ることになります。 そこでは恒星の外層が脈動を起こし、セファイド型脈動変光星 (周期: 数日から百日) となります。 そのため、このループはセファイドループとも呼ばれます。 セファイド型変光星は周期-光度関係を持ち、系外銀河までの距離の評価に利用することができます。
星の質量が \(M \lesssim 2 M_\odot\) の場合、中心の密度が十分大きいために、重力収縮で中心温度が 1 億度に達する前に電子が縮退した状態になります。 すると、中心温度はヘリウム中心核質量だけで決まり、水素燃焼殻の働きによりヘリウム中心核の質量が増加するにつれて温度が上昇していきます。 中心核質量が約 \(0.5 M_\odot\) になると、中心付近の温度が 1 億度に達し、トリプルアルファ反応に伴うエネルギー発生が起こり始めます。 電子が縮退している状態では圧力は密度だけに依存しており、温度には依存しません。 よってエネルギーが発生し温度が上昇しても、圧力が上昇しない状況となります。 このような状態では核融合反応が暴走し、電子の縮退が解けるまで温度が上昇を続け、構造が急激に変化してヘリウム燃焼段階の構造に落ち着きます。 このような現象を、ヘリウムフラッシュと呼びます。 ヘリウムフラッシュを起こすような小質量星のヘリウム燃焼段階の HR 図上の位置は、重元素含有量により大きく異なります。 Pop-I では、赤色巨星枝にほとんどくっついた場所でヘリウム燃焼段階を過ごします。 これに対し、pop-II の恒星は、ガスの不透明度のもとになる重元素が少ないため、ヘリウム燃焼段階での恒星表面温度が高く、水平分枝 (horizontal branch) 星となります。 この名の由来は、球状星団のメンバーとなっている恒星を HR 図上にプロットしたときに、これらの星が水平に並ぶことから来ています。 この段階での HR 図上の位置は、重元素量だけでなく、外層の質量によっても大きく変わります。 球状星団の水平分枝が長く伸びているのは、個々の恒星の外層の質量が少しづつ異なっているためです。 その違いは、それまでの進化で放出した質量が、個々の恒星の自転速度・磁場などによって微妙に変わるためと考えられています。

Leigh et al. (2009) より。NGC 362 の色等級図を描いたもの。HB は水平分枝星、RGB は赤色巨星分枝、MSTO は主系列星の折れ曲がり (turn-off) を表す。
水平分枝が十分に長いと、セファイド不安定帯を横切ります。 そこで水平分枝星は、約 0.5 日の周期を持つ RR ライリ型脈動変光星となります。 この星は、球状星団までの距離の評価に重要な働きをします。

Iben (1991) より。
中小質量 \((M \lesssim 8 M_\odot)\) のヘリウム燃焼後の進化
この場合、ヘリウム燃焼後、炭素と酸素からなる中心核では電子が強く縮退し、中心ではそれ以上の核融合反応は起こりません。 中心に電子の縮退した C/O 核、そのすぐ外側にヘリウム燃焼殻、その外にヘリウム層、水素燃焼殻、そしてさらにその外側に水素を多く含む対流外層となる構造ができます。 このような恒星は HR 図上の赤色超巨星の領域にあり、Asymptotic Giant Branch (AGB: 漸近巨星枝) 星と呼ばれます。 この段階では、ヘリウム燃焼殻が熱的に不安定であり、数千年の周期でヘリウム燃焼が暴走します。 この現象は、熱パルスまたはヘリウム殻フラッシュと呼ばれます。 この段階の進化は、高温でのヘリウム燃焼とその生成物の混合が複雑にからみあっており、進化モデルの計算にも多くの仮定が必要となります。 しかしその結果によると、大まかに次のような現象が起こります。 熱パルスに伴って対流層が発生し、核反応の影響がヘリウム層のほぼ全域に広がります。 閑静期には、対流外層が熱パルス時に核反応の影響を受けた領域にまで進入します。 そして生成物の一部が対流外層の中に混入し、表面に現れるようになります。 AGB 星のスペクトル解析によると、Ba, Y, Sr などの s 過程元素が、明るい AGB 星ほど多くなる傾向を持っています。 これは熱パルスの際に s 過程 (遅い中性子捕獲) による重元素形成が起こっていることを示すものです。
AGB 星の外層は不安定で、脈動を起こします。 そのため、ミラ型星や半周期型変光星などの長周期変光星となっているものが多く存在します。 また AGB 星の別の特徴の一つに、盛大な質量放出が起こっていることが挙げられます。 放出されたガスからダストが形成され、星の可視光を遮るために、赤外線でしか見えない状態になった AGB 星が赤外線星 (OH IR 星) であろうと考えられています。 外層の脈動と熱パルスとは、質量放出機構に重要な影響を及ぼしていることが予想されていますが、理論的に解明するにはまだ至っていません。
AGB 段階での質量放出により、水素を多く含む外層のほとんどを失うと、本来は光球よりだいぶ内側になる部分が露出することになるため、表面温度が上昇して見えるようになります。 よって HR 図上をほぼ水平に進化します。 表面温度が数万度以上になると、AGB 段階で放出されたガスが星からの輻射で電離され、蛍光を発します。 これが惑星状星雲 (planetary nebula) と呼ばれるもので、星はその中心星として観測されます。 その後、表面温度が 10 万度程度に上昇したのち、少しずつ減光するとともに表面温度が下がっていき、暗い白色矮星へと冷却進化します。

Iben (1991) より。\(5 M_\odot\) の恒星が進化し、\(0.7 M_\odot\) 程度の白色矮星が形成・冷却進化する様子を表したもの。
白色矮星の典型的な質量はおよそ \(0.6 M_\odot\) であり、半径は太陽半径のおよそ 1/100 です。 単独の白色矮星は、時間経過とともに冷えて暗くなっていくだけで、それ以上の変化はありません。 冷却の速さは、暗くなるにつれて遅くなっていくため、我々の住む天の川銀河の中には、銀河が生まれてこれまでに形成された中質量星の残骸である暗い白色矮星がたくさん存在すると考えられます。 実際、太陽近傍の白色矮星の数と明るさの関係から、白色矮星の数が暗いものほど多くなっています。 またその明るさにも、下限があることが知られています。 それは、銀河が生まれてから現在までの間の有限の時間の間に、その暗さまでしか冷えられないでいるということを示しています。 この観測事実を利用することで、天の川銀河円盤の年齢を評価することができます。 この評価方法から、天の川銀河の恒星円盤の年齢はおよそ 100 億年程度であると言われています。
連星系に存在する白色矮星は、活動的な現象を起こす可能性があると知られています。 連星系が磁場や重力波によって角運動量を失い、連星間の距離が減少したり、伴星が進化して大きさが十分大きくなった場合、伴星の大きさがその重力圏 (critical Roche lobe: 臨界ロッシュローブ) をはみ出します。 このとき、伴星のガスの一部が剥ぎ取られ、白色矮星の重力圏に移動します。 白色矮星にガスが降り積もると、堆積層の下部は圧縮され、高温度になります。 そのため、ある程度の水素を含むガスが降り積もると、爆発的な水素燃焼が起こり、一時的に太陽の 1 万倍以上に増光します。 これまで暗くて見えなかった白色矮星が突然輝いて見えるため、この現象は新星 (Nova) と呼ばれます。 新星現象は、超新星爆発の次にエネルギーの高い現象とも言われています。
また、伴星からのガスは角運動量を持っているため、直接白色矮星の表面に落ちることなく、白色矮星の周囲に円盤を形成します。 この円盤内をガスが回転する間に、ガスの間で角運動量の交換が起こり、ガスは少しずつ白色矮星に近づいていきます。 このような円盤を降着円盤と呼びます。 この降着円盤は時折不安定になり、一度にたくさんのガスが白色矮星に降り注ぐことがあります。 このとき、ガスの重力エネルギーが一度に開放され、円盤が普段より明るく輝きます。 この現象は矮新星 (dwarf nova) と呼ばれます。 次の図は、矮新星の概念図です。

次の図は、矮新星の光度曲線の例を示したものです。

Giovannelli (2008) より。左パネルは古典新星や各種矮新星の典型的な可視光帯域での光度曲線、右上図はバースト周期と増幅振幅の関係、右下図は連星軌道周期とバースト継続時間との関係を表したもの。
伴星から白色矮星への質量の移動が効率的に起こり、白色矮星の質量がその限界質量 (\(\sim 1.4 M_\odot\)、チャンドラセカール質量と呼ばれる) まで達すると、中心で炭素が爆発的に燃焼し、そのエネルギーによって白色矮星全体が爆散します。 この現象は、Ia 型超新星爆発として知られます。 Ia 型超新星はどの場合も、その起源が \(\sim 1.4 M_\odot\) の質量の白色矮星であるため、最大光度がほぼ同じという特徴を持ちます。 この特徴と、非常に明るく輝くことから、遠方銀河までの距離決定に重要な役割を果たしています。 最近では、Ia 型超新星の最大光度は完全に均一ではなく、減光率が速いほど最大光度が暗いという関係が知られています。 遠方銀河までの距離測定にも、この効果が考慮されています。 また Ia 型超新星爆発により、\(\sim 0.6 M_\odot\) の鉄が放出されます。 私たちが日常で用いる鉄の主な供給源となっています。

Doggett & Branch (1985) より。Ia 型超新星の光度曲線を描いたもの。最大光度に達した日と最大光度をそれぞれ 0 としている。
大質量星 \((M \gtrsim 8 M_\odot)\) のヘリウム燃焼後の進化
大質量星ではヘリウム燃焼の後、中心温度が 8 億度程度になると炭素燃焼が始まり、O, Ne, Mg からなる中心核ができます。 \(8M_\odot \lesssim M \lesssim 10 M_\odot\) の恒星では、これ以上核融合反応は進まず、O-Ne-Mg 中心核が縮退します。 その質量がチャンドラセカール質量近くになると、Mg, Ne の電子捕獲が起こり始め、重力崩壊し中性子星が形成されます。 一方、\(M \gtrsim 10 M_\odot\) の恒星ではその後、ネオン燃焼・酸素燃焼・シリコン燃焼が相次いで発生し、次第に重い原子核が形成されて、最後には鉄の中心核が形成されます。 それらの燃焼段階の時間スケールは次第に短くなり、次の図のように、ネオン燃焼以降は 1 年以下の時間スケールで起こります。

“Stellar Interiors” より。SN1987A の内部で起こったとされる熱核反応と、その時間スケールを書いたもの。
鉄は最も安定な原子核なので、核融合反応によりこれ以上重い原子核はできません。 中心温度が 100 億度以上になると、光子のエネルギーが非常に大きくなり、鉄の原子核に衝突して破壊し始めます。 先ほど述べたように、鉄の原子核は最も安定な原子核なので、この反応は吸熱反応です。 そのため、この反応により中心核の圧力が低下し、重力崩壊を起こします。 崩壊した中心核は中性子星となり、外層は吹き飛ばされて、超新星爆発 (重力崩壊型超新星: II, Ib, Ic 型超新星) が起こります。 このタイプの超新星では、鉄は \(\sim 0.1 M_\odot\) 程度しか放出されないことが知られています。
質量が十分大きいと、中心核の崩壊によってブラックホールが形成され、外層も飲み込まれて爆発が起きない (failed supernova) ことが予想されていますが、よくわかっていません。
超新星の光度は最大に達した後、およそ 100 日の時間スケールで比較的ゆっくり減光していきます。 この減光期でのエネルギー源は、爆発の際に形成・放出された \({}^{56} \mathrm{Ni}\) が 6.6 日の半減期で \({}^{56} \mathrm{Co}\) に崩壊し、さらに \({}^{56} \mathrm{Co}\) が 77 日の半減期で \({}^{56} \mathrm{Fe}\) に変化する際に放出されるエネルギーによって説明されています。
大質量星中心核の重力崩壊で形成される中性子星は、その質量が約 \(1.4 M_\odot\)、半径は白色矮星のおよそ 1/1000 で約 10 km であり、パルサーとして観測されます。 連星系中の大質量星が超新星となる場合、連星系が壊され、中性子星とその伴星がバラバラの方向に飛び去っていくことが起きます。 しかし、連星系にある中性子星も存在するので、超新星爆発が必ずしも連星系を壊すわけではありません。 連星系の中にある中性子星に伴星からのガスが降り積もると、爆発的な水素燃焼が発生し、X 線バースターとして観測されます。
参考文献
[1] Iben, 1991, “Single and Binary Star Evolution”
[2] Leigh et al., 2009, “Stellar populations in globular cluster cores: evidence for a peculiar trend among red giant branch stars”
[3] Giovannelli, 2008, “Cataclysmic Variables: A Review”
[4] Hansen, Kawaler & Trimble, “Stellar Interiors: Physical Principles, Structure, and Evolution”
[5] 野本憲一, 佐藤勝彦, 定金晃三, “シリーズ現代の天文学 恒星”