脈動変光星
恒星は、その進化の途中で何回か外層が不安定となり、脈動を起こす段階を経験します。 外層の振動 (脈動) により表面温度が変化し、星の光度が周期的に変化します。 これらを脈動変光星 (pulsating variable stars) と呼びます。 また外層の脈動に伴うドップラー効果により、スペクトル線の波長 (ときにはスペクトル線の輪郭) が周期的に変化する現象が観測されています。
脈動変光星にはさまざまなタイプが存在し、周期も 1 年以上のものから、数分足らずのものまであります。 また、ただ一つの周期で脈動しているものと、同時に複数の周期の脈動が励起されているものとがあります。 後者の場合、脈動振幅にうなり現象が観測されます。 恒星の脈動の観測により、恒星の内部構造に対する有益な情報が得られます。 恒星の脈動は多くの場合に振幅が大きくないため、脈動が恒星の構造と進化に影響することはほとんどありません。 しかし、例外も存在します。 その一つは AGB 星が最終段階に起こす脈動で、ミラ型脈動と言われます。 これは非常に大きな振幅を持つため、この型の脈動は AGB 星からの大きな質量放出を引き起こし、それが AGB 星の寿命を決定します。 セファイド型脈動変光星は周期光度関係を持ち、これは銀河の距離測定に用いられます。
このような脈動変光星は、その変光周期・進化段階によりグループ分けされており、HR 図上のそれぞれかたまった領域に存在します。
脈動周期は大雑把に、半径が大きな星ほど長い傾向にあります。 短いものは白色矮星の 100 秒程度、長いものではミラ型星の数年になるものまで様々あり、非常に広い範囲を持ちます。 次の表は、脈動変光星グループの代表的な例についてそれらの特性を表したものです。
| 型 | \(T_\mathrm{eff}\) [K] | 周期 | 振幅 [mag] |
|---|---|---|---|
| ミラ, 半規則型 | \(\sim 3000\) | \(10^2 - 10^3\)d | \(-10\) |
| セファイド | \(\sim 6000\) | \(1-100\)d | \(0.3 - 2\) |
| RR ライリ | \(\sim 7000\) | \(0.1-1\)d | \(0.3 - 1.5\) |
| ベータ・セファイド | \(\sim 2.5 \times 10^4\) | \(4-6\)hr | \(0.01 - 0.3\) |
| SPB | \(\sim 1.5 \times 10^4\) | \(\sim 1-2\)d | \(0.01 - 0.02\) |
| \(\delta\) Sct | \(\sim 7500\) | \(1-6\)hr | \(0.01 - 0.8\) |
| \(\gamma\) Dor | \(\sim 7000\) | \(1-2\)d | \(- 0.1\) |
| roAp | \(\sim 8000\) | \(4-15\)min | \(- 0.02\) |
| sdBV (short) | \(30000-35000\) | \(100-200\)s | \(- 0.01\) |
| sdBV (long) | \(25000-30000\) | \(\sim 1\)hr | \(- 0.01\) |
| DAV, DBV | \(10000, 20000\) | \(100 - 1000\)s | \(0.02 - 0.3\) |
| PG1159 | \(10^5\) | \(400-1700\)s | \(\sim 0.1\) |
| 太陽 | \(5800\) | \(\sim 5\)min |
ミラ、半規則型は赤色超巨星の脈動によるもので、周期が非常に長いものです。 セファイド型と RR ライリ 型変光星は、ヘリウム燃焼段階にある脈動星です。 これは距離の決定に利用されることが多いです。 \(\beta\) Cephei stars, Slowly Pulsating B (SPB) stars, \(\delta\) Sct, \(\gamma\) Dor, rapdly oscillating Ap (roAp: 高速振動する A 型特異星) は、種磁場星の脈動変光星です。 Subdwarf B variables (sdBV) はヘリウム燃焼段階にある恒星ですが、質量放出により外層が非常に薄くなっているため、半径が小さく高温の表面温度を持つ星です。 sdBV 星は 1990 年代後半になって発見された脈動変光星のグループです。 DAV, DBV, DOV は白色矮星の脈動変光星グループです。 太陽の 5 分振動は、外層の対流運動によって励起された振動であり、非常にたくさんの固有振動の重ね合わせとなっています。 太陽振動の正確な振動数の観測は、太陽内部の構造を推測することを可能にし、これを日震学 (Helioseismology) と呼びます。 また最近では、他の恒星でも太陽型の振動が観測されつつあります。
星の脈動には、大きく分けて球対称的な動径脈動 (radial pulsations) と、非球対称的な非動径脈動 (non-radial pulsations または non-radial oscillations) とがあります。 大まかに、主にセファイド型星・ミラ型星などの巨星・超巨星では動径脈動が起こり、主系列星・白色矮星などでは非動径脈動も現れてきます。 白色矮星での動径脈動は、現在まで確認されていません。
動径脈動の周期は、自由落下時間スケールで起こります。 よってこれは星の平均密度のルート \(\sqrt{R^3 / M}\) に比例します。 この関係を周期-平均密度関係と呼びます。 この関係により、主系列脈動星よりも巨星の脈動の周期が長いことが理解できます。 しかし、この関係に従わないようなものも存在します。 例えば、白色矮星の自由落下時間は数秒ですが、白色矮星の脈動周期は 100 - 1000 秒程度です。 これは白色矮星の脈動が、長周期の g-モード非動径振動であるためです。
参考文献
[1] Hansen, Kawaler & Trimble, “Stellar Interiors: Physical Principles, Structure, and Evolution”
