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統計力学の復習
カノニカル分布
カノニカル分布の分布関数は以下のように書けるのでした。
ここで
例として、
のようになります。これを(1.1), (1.2)式に代入すると
が得られます。統計力学においては分布が重要です。しかし、それをそのまま扱うのは困難なので、その分布から得られる期待値などを計算します。
となります。
ヘルムホルツの自由エネルギー
ここで自由エネルギーを導入しましょう。
すると
のようになっていることがわかります。もし自由エネルギーを計算できれば、分配関数
統計物理で何か研究しようと思ったときには、エネルギーをモデル化することも重要です。そのエネルギーをもとに総和をとる or 積分を行うことで分配関数を計算することができますが、多変数においてはそれを計算することは困難を極めます。よって以下ではどのような式の形であれば総和・積分の計算ができるかを考えていきましょう。
人の手で解析的に計算可能な積分
有名なガウス積分
ならば計算できるでしょう。指数関数はガウス積分として、分数関数は等比級数になっていれば計算できます。とにかく、出てきた問題をこれらの形に変形するというのが重要なミッションになります。
どう頑張ってもこれらの形にできない問題は存在します。その場合は潔く諦めましょう。そこから新しい研究の種を見つけることが大切です。もしくは数値計算・数値シミュレーションを行うという方法もあります。その意味では「積分ができること」と「統計力学ができること」は等価と言っても良いでしょう。
多変数への一般化
上式を多変数に拡張しましょう。
Ising model
これは磁性体を表現するためのトイモデルです。変数は2値
ここで
この系の振る舞いを以下に図示します。スピンが揃うとき、エネルギーは
エネルギーは低い状態になろうとするので、全てのスピンは揃おうとします。しかしエントロピー
全結合モデル (Fushimi-Tempely model or Mean-Field model)
この場合に計算を行っていきましょう。
ここで以下のテクニックを用います。
です。添字の入れ替え
となります。ここで
のようになります。途中、
次に以下のテクニックを用います。
オンライン動画のTechnique 2の式と形が違うの注意が必要です。
(1.16)式は
今、
エントロピーは状態数を数えたものです。状態数を数えるとは、同じエネルギーの状態を数えることを意味しますが、これは今では同じ磁化の状態を数えることに対応します(エネルギーが磁化にのみ依存していることからこのように考えられます)。するとデルタ関数部分はエントロピーを意味すると考えることができるので、以下のようにエントロピー
のように定義することができます。そしてその前についているのはエネルギーで
と考えることができます。これらより
ここから自由エネルギーは
この式に現れる被積分関数は
今は
これは熱力学でのヘルムホルツエネルギー
の計算
先ほどの計算からエントロピー
のように書かれました。この計算を進めるために、デルタ関数のフーリエ積分表示を考えましょう。
これにより、再び鞍点法を用いることができます。鞍点法は最大となる
今、
これらより
これらを持ちいて自由エネルギーは
となります。先ほどと同様の計算を行って
これは1スピンあたりの自由エネルギーを表します。鞍点を計算すると
(1.26), (1.29)式をまとめると
となります。これは平均場近似を用いたときに出てきた自己無撞着方程式(Self-consistent equation)です。「平均場近似は所詮、近似手法に過ぎない」と思われたかもしれませんが、全結合においては厳密解を与える強力なツールとなっています。
物理では全結合の問題というのを考えるのは難しいかもしれません。しかし、情報科学においてはあるシグナルが他の様々n要素と関係づくことで機能することがあり得るため、物理的に繋がりを持っている必要はありません。よって全結合である問題をモデル化できるということが十分にあり得ます。
物理では
有限の
(1.30)を図示して、この問題の振る舞いを見てみましょう。
逆温度
この相転移という現象は
鞍点の安定性については、そこで取った値が最大(極大)なのか最小(極小)なのかを見極める必要があります。
Appendix: 多次元のガウス積分
を求めましょう。
のように変形します。
となります。
参考文献
[1] 大関真之 Youtube動画 “Statistical physics and information processing vol. 1 (情報統計物理) 【Tokyo Tech Lecture Live Streaming”
[2] 田崎晴明, “統計力学 I”
[3] 田崎晴明, “統計力学 II”
[4] 久保亮五, “大学演習 熱学・統計力学”
[5] 西森秀稔, “スピングラス理論と情報統計力学”