Table of contents
  1. 宇宙を構成する物質の状態方程式
    1. 非相対論的物質(バリオン)の場合
    2. 非相対論的物質(ダークマター)の場合
    3. 相対論的物質(光子)の場合
      1. 補遺: 光子のエネルギー密度
      2. 補遺: 光子数密度
    4. 相対論的物質(ニュートリノ)の場合
    5. 宇宙膨張を加速させるもの(ダークエネルギー)の場合
    6. 空間(真空)の場合

宇宙を構成する物質の状態方程式

物質、もしくは相対論的粒子からなる輻射、そしてダークエネルギーが優勢かどうかを今後議論するために、これらの状態方程式を

p=wρc2

という形で求め、そのwの値を具体的に求めていくことを考えましょう。

非相対論的物質(バリオン)の場合

pbρbc2v2c20

よりwb0となります。

非相対論的物質(ダークマター)の場合

pDMρDMc2v2c20

よりwDM0となります。

相対論的物質(光子)の場合

ある角度で壁に衝突する光子

光子が一辺Lの立方体に閉じ込められているとしましょう。図のように完全弾性衝突を考えると、1回の衝突でx方向の壁に与える力積は

Δpx=2hνccosθ

となります。x方向に一往復するのにかかる時間はt=2L/(ccosθ)より

pγ=2hνccosθtL3ehν/(kBT)12ν2c3dνdΩL2=2hν3c3cos2θehν/(kBT)1dνdΩ=0dν11dμ2π2hν3c3μ2ehν/(kBT)1=134π0dν2hν3c3ehν/(kBT)1ργc2=13ργc2

よってwγ=13です。

補遺: 光子のエネルギー密度

1辺Lの立方体の中に光子が閉じ込められていることを考えます。光子が存在しているということはLで周期境界条件を満たしていると考えることができるので

eikx=eikxx+ikyy+ikzz {kxL=2πnx(nx=0,±1,±2,)kyL=2πnykzL=2πnz

と書けます。よって状態数は

dnxdnydnz=dkx2π/Ldky2π/Ldkz2π/L=L3(2π)3dkxdkydkz

よって状態密度は

d3nL3=d3k(2π)3=1(2π)3k2sinθkdkdθkdφ=k=2πν/cν2c3dνdΩ

途中、k空間での極座標積分を考えて変形を行いました。統計力学の知識より、占有率はeϵ/(kBT)、光子はボーズ粒子より、カノニカル分布の分配関数は

Z=n=0enhν/(kBT)=11ehν/(kBT)

x=hν/(kBT)と置換して、エネルギーϵ=nhνの光子の平均個数を導出しましょう。

fγ(ν)=n=0nenxZ=n=01Z(denxdx)=1ZdZdx=1ex1

よってエネルギー密度ργc2は、(光子1個のエネルギー)×(平均個数)×状態密度×独立モード数2を積分したものです。

ργc2=0dν04π2ν2c3hνehν/(kBT)1dνdΩ

となります。ついでにさらに計算を行うと

ργc2=8πc3kB4T4h30x3ex1dx=6ζ(4)=π4/15=8π5kB415c3h3T4

補遺: 光子数密度

n=0dν04πdΩ1ehν/(kBT)12ν2c3=8πc3kB3T3h30x2ex1dx=2ζ(3)2.4

CMB(宇宙マイクロ波背景放射)は現在の宇宙でT2.725Kより、nγ,0412cm3となります。

相対論的物質(ニュートリノ)の場合

統計力学の知識より、占有率はeϵ/(kBT)、ニュートリノはフェルミオンより、カノニカル分布分配関数は

Z=n=01enhν/(kBT)=1+ehν/(kBT)

ここでニュートリノは質量0を仮定します。この仮定により光子と同様の計算で平均個数・状態密度を求めることができます。

fFD(ν)=1Zehν/(kBT)=11+ehν/(kBT)

よってエネルギー密度ργc2は、(ニュートリノ1個のエネルギー)×(平均個数)×状態密度×独立モード数1を積分したものです。

ρνc2=0dν04πdΩhνehν/kBT+12ν2c3=8πc3kB4T4h30x3ex+1dx 1e2x1=1(ex+1)(ex1)=12(1ex11ex+1)  1ex+1=1ex12e2x1

より

0x3ex+1dx=0(x3ex12x3e2x1)dx=0x3ex1dx180X3eX1dX=780x3ex1dx

これらより

pν=13ρνc2, ρνc2=78ργc2

よってwν=13です。
ちなみに

Tν=(411)1/3TCMB1.95 [K], nν112 [cm3]

です。

宇宙膨張を加速させるもの(ダークエネルギー)の場合

フリードマン方程式より

a¨a=4πG3(ρDE+3pDEc2)=4πG3ρDE(1+3wDE)

加速膨張ではa¨>0よりwDE<13となります。

空間(真空)の場合

空間は宇宙に膨張も収縮ももたらさないとすると、フリードマン方程式より

1+3wK=0  wK=13

です。


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