Table of contents
  1. 一般化されたオームの法則 (generalized Ohm’s law)
    1. Hall項の大きさの比較
    2. バッテリー項の大きさの比較
    3. よく使われれるオームの法則

一般化されたオームの法則 (generalized Ohm’s law)

完全電離した水素ガスを考えましょう。このとき、電子と陽子の数は等しく、この2つの粒子しか存在しないことになります。電子には添字のe, 陽子には添字のpを付けて、2つの粒子について運動方程式を考えると

(1)meneDveDt=Peene(E+ve×Bc)nemeτep(vevp) (2)mpnpDvpDt=Pp+enp(E+vp×Bc)+npmpτep(vevp)

ここでmi,ni,vi,Pi,τijはそれぞれi粒子の質量、個数密度、速度ベクトル、圧力、そしてi粒子とj粒子の衝突時間(運動量を交換するのにかかる大体の時間)です。右辺の第3項は、1個の電子が1個の陽子と一回の衝突でme(vevp)だけ運動量を受け渡すことからくる、衝突項です。
完全電離した水素ガスよりne=np=n、さらにmempから、単位体積あたりの質量ρ

(3)ρmene+mpnpmpn

また電子と陽子が混在した流体要素を考えると、その速度は流体要素の中に含まれる電子と陽子の集団の重心の速度と考えることができるので

(4)v=menve+mpnvpmen+mpn=(3)menve+mpnvpρ

(1)式より、mempとして、左辺の慣性項は無視すると

(5)0=Peen(E+Bc)menτep(vevp)  E=ve×Bc1enPemeeτep(vevp)

電流密度は

(6)jen(vpve)

のように定義されるので

(7)E=ve×Bc1enPemee2τepnj

これを一般化されたOhmの法則と呼びます。またjの前の係数を

(8)σe2τepnme

を電気伝導度と定義します。
先に述べた通りmempより、運動量のほとんどは陽子によるものと考えれば、(4)式からvvpとしても妥当でしょう。これと(6)式より、vej,vで書き換えると

(9)E=(vjen)×Bc1enPejσ=v×Bc+j×Benc1enPEjσ

最右辺の第2項は、電荷を持った粒子がドリフトすることによって電荷に偏りが生じる効果を表しており、これをHall項と呼びます。第3項は電子ガス圧勾配により生じる(そもそもの電子の分布に偏りがあることに起因する)電場を表し、これをバッテリー項と呼びます。

Hall項の大きさの比較

Hall項がどの程度の大きさかを見積もってみましょう。Maxwell方程式から、変位電流項を無視した×B=4πcjより

|j×Bencv×Bc|=|(×B)×B4πenv×Bc|cB4πenLv=B24πρcmpeB=1/Ωc,p1Lv=(vA2v2)2vLΩc,p

途中、空間微分はL1のように典型的な空間スケールで置き換えました。またΩc,pは陽子のcyclotron振動数です。また最後のaL,p=v/Ωc,pは陽子のLarmor半径に一致します。例えば星間空間(L1[pc])のようにaL,pLならば、Hall項は第1項に比べて十分小さいことがわかります。

バッテリー項の大きさの比較

同様にバッテリー項についても、その大きさが第1項に比べてどの程度の大きさかを見積もってみましょう。圧力については状態方程式としてPe=nkBTeを用いると

|Peenv×Bc|nkBTeLencvB=kBTempv2cmpeB=1/Ωc,pvL=(kBTempv2)(vLΩc,p)

電子温度と陽子温度が同程度であると考えることができれば、kBTemeve2mpvp2mpv2より、O(kBTe/mpv2)1としても良いでしょう。よってこの場合もaL,pLならば、この項を無視することができます。

よく使われれるオームの法則

以上の議論から、Hall項とバッテリー項を無視した

(10)j=σ(E+v×Bc)

がOhmの法則ととしてよく知られている式です。


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