Table of contents
- はじめに
- 2021年の研究動向・ホットトピックス
- 2021年arXiv総括
- SR (太陽・恒星分野)
- Turbulent generation of magnetic switchbacks in the Alfvénic solar wind
- Dynamical coupling of a mean-field dynamo and its wind: Feedback loop over a stellar activity cycle
- The origin and evolution of magnetic white dwarfs in close binary stars
- SPLUSJ210428.01-004934.2: An Ultra Metal-Poor Star Identified from Narrowband Photometry
- The role of non-axisymmetry of magnetic flux rope in constraining solar eruptions
- Zooming into the Collimation Zone in a Massive Protostellar Jet
- VVV-WIT-08: the giant star that blinked
- M-dwarf’s Chromosphere, Corona and Wind Connection via the Nonlinear Alfvén Wave
- Spectroscopic evidence for a large spot on the dimming Betelgeuse
- Asteroseismic Fingerprints of Stellar Mergers
- Solar differential rotation reproduced with high-resolution simulation
- Probable detection of an eruptive filament from a superflare on a solar-type star
- IM (装置開発・シミュレーション技法等分野)
- Science and survival: insights from Astronomy
- Touching the Stars: Using High-Resolution 3D Printing to Visualize Stellar Nurseries
- Writing Scientific Papers in Astronomy
- TULIPS: a Tool for Understanding the Lives, Interiors, and Physics of Stars
- Multi-Resolution HEALPix Maps for Multi-Wavelength and Multi-Messenger Astronomy
- EP (太陽系・系外惑星系分野)
- The Habitable-zone Planet Finder Detects a Terrestrial-mass Planet Candidate Closely Orbiting Gliese 1151: The Likely Source of Coherent Low-frequency Radio Emission from an Inactive Star
- Jupiter’s “Cold” Formation in the Protosolar Disk Shadow: An Explanation for the Planet’s Uniformly Enriched Atmosphere
- Past, Present and Future Stars that can see Earth as a Transiting Exoplanet
- Reimagining the water snowline
- Polluted White Dwarfs Reveal Exotic Mantle Rock Types on Exoplanets in our Solar Neighborhood
- Mercury as the relic of Earth and Venus’ outward migration
- Painting Asteroids for Planetary Defense
- CO (宇宙論分野)
- Towards Cosmological Simulations of Dark Matter on Quantum Computers
- Discovery of Magnetic Fields Along Stacked Cosmic Filaments as Revealed by Radio and X-Ray Emission
- HyPhy: Deep Generative Conditional Posterior Mapping of Hydrodynamical Physics
- Void replenishment: how voids accrete matter over cosmic history
- A Comprehensive Measurement of the Local Value of the Hubble Constant with 1 km/s/Mpc Uncertainty from the Hubble Space Telescope and the SH0ES Team
- GA (星間空間・星形成・銀河・銀河団分野)
- The Galactic center chimneys: The base of the multiphase outflow of the Milky Way
- The first evidence for three-dimensional spin-velocity alignment in pulsars
- Tiny-scale Structure Discovered toward PSR B1557−50
- Diffuse Synchrotron Emission Associated with the Starburst in the Circumnuclear Disk of NGC 1275
- Anisotropic satellite galaxy quenching modulated by supermassive black hole activity
- Jets from MRC 0600-399 bent by magnetic fields in the cluster Abell 3376
- A New Challenge for Dark Matter Models
- An ancient massive quiescent galaxy found in a gas-rich z ~ 3 group
- A relic from a past merger event in the Large Magellanic Cloud
- Rapid growth of seed black holes during early bulge formation
- Active Galactic Nuclei Abundance in Cosmic Voids
- Reading M87’s DNA: A Double Helix revealing a large scale Helical Magnetic Field
- HE (高エネルギー宇宙物理分野)
- The Imprint of Large Scale Structure on the Ultra-High-Energy Cosmic Ray Sky
- Evidence that Ultra-High-Energy Gamma Rays are a Universal Feature Near Powerful Pulsars
- Mildly relativistic magnetized shocks in electron-ion plasmas – II. Particle acceleration and heating
- High Energy Neutrinos from Choked Gamma-Ray Bursts in AGN Accretion Disks
- Observational properties of a general relativistic instability supernova from a primordial supermassive star
- HAWC observations of the acceleration of very-high-energy cosmic rays in the Cygnus Cocoon
- First Detection of sub-PeV Diffuse Gamma Rays from the Galactic Disk: Evidence for Ubiquitous Galactic Cosmic Rays beyond PeV Energies
- Extended Very-High-Energy Gamma-Ray Emission Surrounding PSR J0622 + 3749 Observed by LHAASO-KM2A
- Magnetic field generation by charge exchange in a supernova remnant in the early universe
- Observation of gravitational waves from two neutron star-black hole coalescences
- Beamed emission from a neutron-star ULX in a GRRMHD simulation
- RAIKOU: A General Relativistic, Multi-wavelength Radiative Transfer Code
- Black hole flares: ejection of accreted magnetic flux {through 3D plasmoid-mediated} reconnection
- A snapshot of the oldest AGN feedback phases
- High-entropy ejecta plumes in Cassiopeia A from neutrino-driven convection
- Morphological transition of the compact radio lobe in 3C84 via the strong jet-cloud collision
- State-of-the-art energetic and morphological modelling of the launching site of the M87 jet
- Peta-electron volt gamma-ray emission from the Crab Nebula
- SR (太陽・恒星分野)
- 統計情報
- 結言
はじめに
こちらは Qiitaさんの物理学アドベントカレンダー Advent Calendar 2021 21日目の「今年のarXiv/astrophチェックで面白かったものをご紹介」の記事です。
昨年からastro-phのチェックを(可能な限り)毎日行い始めました。そしてそれを記録に残すためにTwitterでの情報発信並びにGitHubのリポジトリのIssuesに登録する作業を行ってきました。今回は2021年にGitHubにissue登録されているものの中から、個人的に特に面白いと思ったものを抽出します。さらに論文内容の傾向から、2021年の研究ホットトピックスだったであろうと思われるものをご説明いたします。
注意: 筆者が宇宙物理系出身の中でも磁気流体シミュレーションによる研究テーマを扱っていたため、目を通した論文がそのテーマに偏っています。以下に記載されている情報が全てではないことをご留意ください。
2021年の研究動向・ホットトピックス
次世代望遠鏡での観測を見据えた論文が続々
2021年末にはハッブル宇宙望遠鏡の後継機と名高いJWST(James Webb Space Telescope)が打ち上げされます。また重力波検出から一気に盛り上がりを見せ、将来的には宇宙空間でのレーザー干渉計から重力波を検出する技術としてLISA(Laser Interferometer Space Antenna)や天琴(TianQin)などが計画されています。電波ではSKAなどに期待が寄せられています。このような観測技術の発達に伴う新しい望遠鏡での観測を見据えて、「この望遠鏡のこの感度ならこんな現象が検出できるのでは」という論文がたくさん出ているように見受けられました。
天の川銀河の進化の歴史解明を目指す研究競争が加熱
Gaiaなどの膨大なデータが出揃ったこともあり、天の川銀河円盤内部やハローにいる球状星団や恒星ストリームの研究が盛んに行われている印象を受けました。天の川銀河がどのように出来たのか、どのような進化を経て現在の姿に至っているのか、それが解明される時も近いかもしれません。
AGN円盤中での恒星進化や連星進化研究のプチブームが来ている?
AGN円盤はとても大きく、その中には多数の恒星や連星が埋もれていると考えられます。この中で起こる恒星への質量降着などが、恒星・連星進化に影響を与え、その最後には特別なBH形成などをもたらすのではないかと期待されています。またAGN円盤内でγ線バーストや連星中性子星合体が起こった場合、その見え方も普通のものと異なるなどが予想されています。今後の観測精度の向上から、このような天体の発見が期待されています。
共通外層進化(Common Envelope Evolution)の波が到来?
連星系において、主系列後に恒星の外層が膨張することでもう一方のコンパクト天体が飲み込まれる共通外層進化の理論が再び注目を集めいています。共通外層内部にいるコンパクト天体からジェットが噴き出したり、これまで説明できなかった新しいタイプの超新星を生み出すのではないかという期待によるものと推察されます。
ブラックホールシャドウが天文研究人気を牽引?
人類がブラックホールシャドウを直接撮像したという研究報告から早2年以上が経過しました。しかしそれでもまだ説明できていない物理過程が多く存在し、それを解明しようと様々な研究が世界中で巻き起こっています。また次世代のVLA, ngVLAでの観測提案も多くなされている現状です。
高エネルギー業界は新発見が目白押し!
メキシコに建設されたHAWCや中国に建設されたLHAASOなどのγ線・宇宙線観測施設が猛烈な成果を上げ始めています。また南極に建設されたニュートリノ観測所IceCubeによるニュートリノ観測データからも続々と新発見が相次いでおり、これを発展させたGen2構想も始まっています。高エネルギー観測業界の今後の発展と新発見に期待です。
2021年arXiv総括
特に面白いと感じたもののみを抽出したつもりですが、たくさんあります。
SR (太陽・恒星分野)
SRタグが付いたものは全部で189本でした。
Turbulent generation of magnetic switchbacks in the Alfvénic solar wind
PSPで示された磁気Switchbacksが粒状斑駆動のAlfvén波と太陽風乱流から発生するかを調査。数値計算により同じ特徴を持つ磁気Swithcbacksの再現に成功。解析からこのSwitchbackは磁場方向に不連続な大振幅(非線形)Alfvén波と判明。
ピックアップ理由: PSP観測を再現するシミュレーションを行ったもの。磁気流体計算に対する深い洞察から観測を説明するという素晴らしい論文とお見受けしました。
ArXiv
Dynamical coupling of a mean-field dynamo and its wind: Feedback loop over a stellar activity cycle
恒星内部で起こるαΩダイナモ磁場と恒星風の関係を2.5DMHD計算。活動周期の相関関係から、コロナへのダイナモ活動の影響を追跡できることを示した。 ピックアップ理由: 恒星内部で起こる磁気活動がその恒星風に影響を与えることを示した論文。当然と言えばそうかもしれませんが、それを定量的に評価したことからピックアップしました。将来的には遠くの恒星のダイナモの様子を診断できるようになるかも?
ArXiv
The origin and evolution of magnetic white dwarfs in close binary stars
強磁場白色矮星(WD)の進化モデルの考案。降着を起こしているWDの自転進化とコア結晶化と2つの磁場相互作用を含む連星進化モデルを計算したところ、結晶化と回転が駆動するdynamoが激変WDの強磁場を発生させると発見。Nature Astronomy.
ピックアップ理由: 白色矮星の中でも強い磁場を持つものの進化の謎に迫った研究。磁場と聞くと面白そうに感じてしまうのでピックアップしました。
ArXiv
SPLUSJ210428.01-004934.2: An Ultra Metal-Poor Star Identified from Narrowband Photometry
超金属欠乏(Ultra Metal-Poor; UMP)星を発見。[Fe/H]=-4.03で、これは金属を持たない30M_sunの恒星によって汚染されたガス雲から形成された第二世代星の可能性。ApJL.
ピックアップ理由: 金属のない恒星、すなわち初代星の研究とも繋がる大発見であることから選出しました。
ArXiv
The role of non-axisymmetry of magnetic flux rope in constraining solar eruptions
光球面で観測された磁場を用いて2015年1月30日に発生した閉じ込め噴火をデータ駆動型MHD計算。コロナ質量放出を伴わない太陽フレアの観測を再現。これは動径方向磁場や磁束ロープの非軸対称性に起因するものと判明。Nature.
ピックアップ理由: CMEを伴わない太陽フレアの存在を個人的に初めて知ったことと、今後のフレアに伴う質量放出予測に大きな貢献をすることが予想されるため選出しました。
ArXiv
Zooming into the Collimation Zone in a Massive Protostellar Jet
大質量原始星Cep A HW2からの電波jetを高分解能観測。このjetの形態はよく研究されている低質量原始星からのものとは大きく異なり、原始星/円盤系から吹き出す広角度の風と20-30au離れた場所に絞られた部分が存在した。ApJL.
ピックアップ理由: 太陽・恒星分野の中でも原始星、そしてそれに付随する原始惑星系の理解に繋がるインパクトがあることから選出しました。
ArXiv
VVV-WIT-08: the giant star that blinked
VVV-WIT-08という巨星フェーズの恒星で2012年4月にfluxが97%も減少する事象を発見。この天体を17年間観測しているがこのような事象はこの1回きり。不透明度の高い楕円体による光の遮りによるモデル化を行ったが、全ては説明できなかった。
ピックアップ理由: 前代未聞の物理現象を観測したかもしれない、そのインパクトからピックアップしました。
ArXiv
M-dwarf’s Chromosphere, Corona and Wind Connection via the Nonlinear Alfvén Wave
1DMHD計算から、恒星の光球->彩層->コロナ->惑星間空間へのAlfvén波の非線形伝搬を直接解明。特にAlfvén波の非線形モード結合により生成されるslow shockが彩層圏(恒星のスピキュール)のダイナミクスと恒星風加速に重要であると判明。
ピックアップ理由: MHD計算というと2Dや3Dシミュレーションばかりに目が行きますが、こちらは1D計算。次元が少ないからこそ、そこで起こる物理のエッセンスを抽出するような、深い洞察の論文であることから選出しました。
ArXiv
Spectroscopic evidence for a large spot on the dimming Betelgeuse
2019年10月~2020年3月にかけて減光したベテルギウスを観測。ダストの遮蔽などが考えられたが、この観測では2020年1月31日にはベテルギウス有効温度が170K減少し、星表面に巨大なダークスポットが出現していたことが減光の原因と判明。Nature
ピックアップ理由: 突然減光を始めたことで「そろそろ爆発するのでは?」と取り上げられたベテルギウス。その正体は恒星表面のダークスポットでした。この問題に決着をつける観測という意味でのインパクトの大きさから選出しました。
ArXiv
Asteroseismic Fingerprints of Stellar Mergers
赤色巨星の星震データから、その恒星が合体を経ているかどうかを測定できる可能性を研究。合体前の主星が主系列にある場合や総質量が2M_sunの合体では判別が困難と判明。赤色巨星のカタログから、合体を経験した候補を15個見つけた。
ピックアップ理由: 恒星内部を診断するために発展してきた星震学、それを利用して恒星の合体の歴史まで紐解こうとする壮大さから選出しました。
ArXiv
Solar differential rotation reproduced with high-resolution simulation
太陽の赤道が速く極が遅い差動回転を高解像度計算で再現。この差動回転の維持には対流に回転の影響を強く与える必要があった。小規模dynamoによる強い磁場が熱対流に大きな影響を及ぼすと判明。黒点活動11年周期の謎が解明されるときも近い?
ピックアップ理由: 富岳を用いた高解像度計算で長年の太陽の未解決問題を見事に解決した研究。その多大なインパクトから選出しました。
ArXiv
Probable detection of an eruptive filament from a superflare on a solar-type star
若い太陽型恒星 EK Draconisの可視光スペクトルから、スーパーフレアを伴う恒星フィラメント噴出を検出。スペクトルの時間変化は太陽フィラメント噴出と一致。恒星CMEが発生したと見られ、その質量は太陽の最大のCMEの10倍と概算。ApJL
ピックアップ理由: 恒星でスーパーフレアが起こることは存じておりましたが、そこから恒星フィラメントが噴き出す様子を観測で捉えることができるとは思いませんでした。その驚き、またスーパーフレアの物理過程の理解に大きなインパクトを与えるだろうことから選出しました。
ArXiv
IM (装置開発・シミュレーション技法等分野)
IMタグが付いたものは全部で76本でした。
Science and survival: insights from Astronomy
COVID-19感染拡大期に、天文学が社会にできることを概説。
ピックアップ理由: このパンデミック状況を鑑みて選出しました。
ArXiv
Touching the Stars: Using High-Resolution 3D Printing to Visualize Stellar Nurseries
分子雲構造を3Dプリントを利用して可視化。Bitmapベースの3Dプリンティングにより、分子雲内の微妙な密度勾配分布を再現することに成功。複雑な天文データセットを直感的に理解したり、教育・広報活動に使えそう?ApJL.
ピックアップ理由: 3Dプリンタでレッツ・アストロフィジックス!普通に商品として売ったら良さそう、というかほしい。
ArXiv
Writing Scientific Papers in Astronomy
天文学における科学的な論文の書き方指南。英語を母国語としない方々が特に悩む文法やスペリングの問題についても説明。修士と博士学生に向けたものだが、さらにハイレベルな研究者やライティング指導者にも役立つものかもしれない。
ピックアップ理由: 私も英語ライティングは苦手なので…
ArXiv
TULIPS: a Tool for Understanding the Lives, Interiors, and Physics of Stars
恒星の構造・進化のわかりやすい図やアニメーションを生成するPythonパッケージ”TULIPS”を開発。「この分野で用いられている図は静的で複雑なものが多く、時として直感的でなかったり直感に反する場合がある。だからこれを解消したかった」
ピックアップ理由: このような地道なツール開発が後世の役に立つであろうことを鑑みて選出しました。
ArXiv
Multi-Resolution HEALPix Maps for Multi-Wavelength and Multi-Messenger Astronomy
高エネルギー・重力波天文学分野で標準的に用いられるHEALPixで多分解能マップの作成・処理・分析が可能なPythonライブラリ”mhealpy”を開発。
ピックアップ理由: 重力波だけでなく宇宙論のCMB全天観測などにも役立つかもしれない可能性から選出しました。
ArXiv
EP (太陽系・系外惑星系分野)
EPタグが付いたものは全部で95本でした。
The Habitable-zone Planet Finder Detects a Terrestrial-mass Planet Candidate Closely Orbiting Gliese 1151: The Likely Source of Coherent Low-frequency Radio Emission from an Inactive Star
フレア活動などのない静かなM4.5矮星からcoherentな低周波電波放射を観測。これは1-5日の軌道周期で回る地球サイズの惑星との恒星-惑星相互作用による理論予想と一致。そして近赤外観測から同様の惑星が検出。電波が系外惑星探査に使えるかも。ApJL.
ピックアップ理由: 系外惑星観測に電波という新しい領域が追加される可能性から、ピックアップしました。
ArXiv
Jupiter’s “Cold” Formation in the Protosolar Disk Shadow: An Explanation for the Planet’s Uniformly Enriched Atmosphere
H2O snow lineに降り積もったダストが影を作ることで木星軌道周辺が冷やされ窒素や希ガスが氷を形成する理論。この氷が集まって木星大気に溶け出せば、原始木星が今の場所で形成しても木星大気の元素組成を説明できると判明。A&A Letters.
ピックアップ理由: 原始木星の形成理論に大きな一石を投じる理論であることから選定しました。
ArXiv
Past, Present and Future Stars that can see Earth as a Transiting Exoplanet
地球から326光年より近い距離にある恒星1715個が、人類文明開始からこれまでの間に地球が太陽をトランジットしているのを観測するのに適した場所と判明。その中には7つの系外惑星の主星が含まれ、75個の恒星には人間が作った電波が届いている
ピックアップ理由: もしも地球外知的生命体が地球の近くにいた場合、それらが地球を観測できるか、そして地球上に住む私たちの活動を検出できるのか、というSF的な研究から選出しました。
ArXiv
Reimagining the water snowline
原始惑星系円盤AS205で観測された水輝線と物理化学モデルを比較したところ、通常の円盤内部の温度構造に矛盾があると判明。また円盤表面での水のsnowlineと円盤内部でのsnowlineが、垂直方向の混合により同じ位置に来ることがわかった。ApJL.
ピックアップ理由: 原始惑星系円盤の重要な構造であるスノーラインの理論の発展に大きな貢献をすることから、ピックアップしました。
ArXiv
Polluted White Dwarfs Reveal Exotic Mantle Rock Types on Exoplanets in our Solar Neighborhood
かつて惑星を持っていたことで、それにより重元素汚染を受けた白色矮星の汚染具合から、惑星が持っていた岩石の種類を推定。大陸地殻やその他の地殻の証拠は発見できなかったものの、ケイ酸塩マントルは識別可能と判明。Nature
ピックアップ理由: 不自然に重元素を持つ白色矮星が惑星を飲み込んだその痕跡から、どのような惑星が存在していたのかを探る研究。そんなことができるのかと素直に驚きです。
ArXiv
Mercury as the relic of Earth and Venus’ outward migration
原始地球と原始金星の核が太陽近傍で形成された後、現在の位置に移動してきたことで水星が形成できる環境領域を形成するシナリオを提案。4つの地球型惑星の質量、地球と火星の同位体の違い、孤立した水星軌道などを簡単に説明できた。ApJL.
ピックアップ理由: シンプルな理論から地球・金星形成についてのたくさんのことを説明できる理論構築、まさにオッカムの剃刀。
ArXiv
Painting Asteroids for Planetary Defense
小惑星をアルカリ金属の薄膜(0.1µm)でコーティングすることでそのアルベド(反射率)を変化させ、太陽からの輻射力の影響を変えて軌道を曲げることで、地球への衝突を避ける手法。小惑星の半面だけでもトルクの変化が生まれて軌道をズラせる。
ピックアップ理由: 地球に衝突する小惑星などを破壊することで衝突を避けるアイデアなどが考案されている中、これは太陽からの輻射の力を借り流ことでそれを避けるというもの。そのひらめきに脱帽です。 ArXiv
CO (宇宙論分野)
COタグが付いたものは全部で102本でした。
Towards Cosmological Simulations of Dark Matter on Quantum Computers
ダークマターを考慮に入れた宇宙論的シミュレーションを量子コンピュータ上で行うために、Schrodinger-Poisson方程式を量子古典ハイブリッド変分アルゴリズムに基づいて解くアプローチの概説。
ピックアップ理由: 宇宙論と量子技術の融合。量子コンピュータは発展途上の技術なので今後の進展に期待です。
ArXiv
Discovery of Magnetic Fields Along Stacked Cosmic Filaments as Revealed by Radio and X-Ray Emission
複数の全天電波MapとX線Mapを用いて銀河団間の3Mpc以上の大規模構造FilamentからのSynchrotron放射と熱的放射を初検出。Synchrotronスペクトル指数はα~-1.0, 磁場強度は30nG≤B≤60nGと推定。
ピックアップ理由: 宇宙大規模構造の磁場を初検出したという偉業。これにより宇宙の種磁場の生成やその進化に制限がかけられる大きな研究であることから、ピックアップしました。
ArXiv
HyPhy: Deep Generative Conditional Posterior Mapping of Hydrodynamical Physics
宇宙論的なN体計算から得られた暗黒物質(DM)場を条件として、流体場を生成する完全畳み込み型変分auto-encoder(VAE)を構築。1つの流体計算でモデルを学習した後、DMのみの新しい計算に対応する流体分布を確率的にマッピングする。
ピックアップ理由: ダークマターのみの宇宙論的計算さえしておけば、その流体計算は後からVAEで作れるというもの。計算コストの削減等に繋がる重要な結果としてピックアップしました。
ArXiv
Void replenishment: how voids accrete matter over cosmic history
ヴォイドを研究するための宇宙論的計算結果を詳細に解析。ヴォイドは予想されたよりも多くの質量流入を経験していることが判明。z~0のヴォイド質量の10%は密度が高い領域から流入したものであり、それらの半分は10Gyr程度ヴォイドにとどまる。
ピックアップ理由: 宇宙ヴォイド空間の環境、およびそこで起こる銀河形成などに大きく寄与する研究であることからピックアップしました。
ArXiv
A Comprehensive Measurement of the Local Value of the Hubble Constant with 1 km/s/Mpc Uncertainty from the Hubble Space Telescope and the SH0ES Team
42個のIa型超新星の母銀河にあるセファイド星を用いたハッブル定数H0の詳細な推定。不確かさを1km/s/Mpcまで減少させることに成功し、その値を73.04と推定。Planckの推定値から5σの差がある。2011年ノーベル物理学賞のRiessさんが筆頭。
ピックアップ理由: ハッブル定数の推定は多くの研究でされていますが、これは段違いの精度で求めた論文。CMBから求めたものとの違いは何によるものなのか、その物理解明研究にも拍車をかけるような重要な結果を示したことからピックアップしました。
ArXiv
GA (星間空間・星形成・銀河・銀河団分野)
GAタグが付いたものは全部で264本でした。
The Galactic center chimneys: The base of the multiphase outflow of the Milky Way
X線/電波/赤外データから,天の川銀河中心方向に数百pcにおよぶチムニーを発見.銀河中心からのoutflowによるものと考えられる.観測から得られた特徴から,銀河中心からの準連続的・断続的な活動とFermiバブルとを繋ぐチャンネルがこのチムニーと結論.
ピックアップ理由: Fermiバブルの存在は10年ほど前から分かっていましたが、そのジェットの根本部分については定かでありませんでした。今後、天の川銀河におけるAGN活動を解き明かす重要な観測になるだろうことから選び出しました。
ArXiv
The first evidence for three-dimensional spin-velocity alignment in pulsars
パルサーPSR~J0538+2817とそれに付随する超新星残骸S147においてスピンと超新星爆発時に受けたキックによる運動速度に3次元的な関連の証拠を発見。Nature Astronomy.
ピックアップ理由: 超新星爆発の物理機構解明に迫る重要な発見であることから選びました。
ArXiv
Tiny-scale Structure Discovered toward PSR B1557−50
PSR B1557-50というパルサーを0.36年という短い間隔で観測を行ったところ吸収成分に変化が見られたことから、そのパルサーと我々の間にある星間空間の空間スケールを17auと算出。ApJL.
ピックアップ理由: 私たちが住む太陽系の周りに存在する星間空間の物理状態の解明に貢献する研究として選定しました。
ArXiv
Diffuse Synchrotron Emission Associated with the Starburst in the Circumnuclear Disk of NGC 1275
NGC1275の中心部で発見された分子ガス円盤に、空間的に一致するような拡散シンクロトロン放射成分を発見。この放射は超新星爆発によって供給された相対論的電子によるものの可能性が高く、銀河中心核円盤の星形成活動の証拠。ApJL.
ピックアップ理由: 中心核に付随する中心核円盤、その中で起こる星形成活動の証拠を捉えた貴重な研究であることから選出しました。
ArXiv
Anisotropic satellite galaxy quenching modulated by supermassive black hole activity
29631個のDM haloの中にある衛星銀河124163個について解析。星形成活動が止まっている衛星銀河は、中心銀河のminor axis方向には比較的少ないことが判明。Minor axis方向に噴出したAGN jetが銀河周辺物質を排除しram圧を下げるためと解釈。
ピックアップ理由: AGN活動が衛星銀河の星形成活動にも影響を与えることを示した、画期的な研究であることからピックアップしました。
ArXiv
Jets from MRC 0600-399 bent by magnetic fields in the cluster Abell 3376
合体銀河団Abell 3376を高解像度電波観測。Jetの方向が接触不連続面付近で90度向きを変えるdouble-scythe(2重鎌)構造を検出するとともに、これを数値計算で研究。不連続面に沿った揃った磁場がjetの方向変化に重要であると判明。Nature.
ピックアップ理由: 銀河団およびその中にあるAGN jetのダイナミクスに磁場が大きく影響を及ぼすことを示した観測・数値計算論文。MHDは私を魅了して止みません。
ArXiv
A New Challenge for Dark Matter Models
現在の暗黒物質(DM)代替案である自己相互作用DM・自己消滅DM・超軽量DMなどでは説明できない、またバリオン物理でも解決できないような高密度を天の川の衛星銀河で発見。”Too-dense-to-be-satellite”問題と名付けている。Phys. Rev. Letters.
ピックアップ理由: Too-big-to-fail, core-cusp問題に続く未解決問題を投げかける重要性からピックアップしました。
ArXiv
An ancient massive quiescent galaxy found in a gas-rich z ~ 3 group
ALMAとHSTの観測からz=2.91の銀河群中に星形成が止まった大質量銀河を発見。恒星質量の大半がz>6-8で急速に形成されたと見られ、3<z<6では受動的な進化をしてきた。冷たいガスが豊富にあることからガス降着停止は星形成活動停止には関係ない?
ピックアップ理由: ガスがたくさんあっても星形成が停止しているという面白い銀河。今後の銀河の星形成活動に影響を与える研究として選出しました。
ArXiv
A relic from a past merger event in the Large Magellanic Cloud
LMCが過去に経験した、星形成率が低く矮小楕円銀河と同じような恒星質量を持つ銀河との合体現象の可能性を発見。LMCにおいても、より小さい構造が降着・合体することで成長していく階層構造が判明?Nature Astronomy.
ピックアップ理由: LMCも小さいものが合体してだんだん大きな構造に進化していく階層構造が確かめられた重要性から選出しました。
ArXiv
Rapid growth of seed black holes during early bulge formation
恒星バルジ形成済みの原始銀河中心部での大質量種BHの初期成長をRHD計算。計算モデルではBH質量が2Myrで約10倍に成長すると判明。バルジ内ガスの大半が降着し切るまで急成長が続く。バルジに対して重たすぎるBHがz~15でJWSTで検出されるかも?
ピックアップ理由: JWSTで観測されるかもしれない高赤方偏移でのSMBHと、バルジ進化に対する重要な理論予想を示したことから選びました。
ArXiv
Active Galactic Nuclei Abundance in Cosmic Voids
z=0.2-0.7の範囲にある比較的明るいAGNと明るいAGNがヴォイドにいる割合を調査。z>0.42ではヴォイドの内側は外側よりも割合が高くなっており、環境依存性が明らかに。低密度領域では1対1で効率よく銀河相互作用が起こっていることを示唆。ApJL
ピックアップ理由: AGNの環境依存性を示した重要性からピックアップしました。
ArXiv
Reading M87’s DNA: A Double Helix revealing a large scale Helical Magnetic Field
M87のジェットを電波で前例のない解像度で観測。根本から300pc-1kpc部分でジェットの2重螺旋構造があり、偏光度勾配がジェットの端で最大などの特徴を捉えた。Kelvin-Helmholtz不安定性により磁場の螺旋構造が大きなスケールまで維持?ApJL.
ピックアップ理由: ブラックホールシャドウが撮影されたことで注目を集めたM87、そのジェットを詳細に観測したもの。今後のジェットの伝搬ダイナミクスに大きな制限をかけるだろう影響からピックアップしました。
ArXiv
HE (高エネルギー宇宙物理分野)
HEタグが付いたものは全部で414本でした。
The Imprint of Large Scale Structure on the Ultra-High-Energy Cosmic Ray Sky
超高エネルギー宇宙線(UHECRs)の観測から、大・中角度スケールの異方性があることが判明。これはUHECRsの発生源が近傍宇宙の大規模構造の物質分布に沿っているとの仮定のもと、GZK horizonや銀河磁場を考慮すると説明することが可能。ApJL.
ピックアップ理由: 未だ謎の部分が多いUHECRsに関する研究。この後のUHECRsの観測などに大きな影響を及ぼすと考え、ピックアップしました。
ArXiv
Evidence that Ultra-High-Energy Gamma Rays are a Universal Feature Near Powerful Pulsars
HAWCによるγ線観測データから、10個の活発なパルサーのある場所と56TeV以上の超高エネルギー(UHE)γ線の相関を探索。その結果、UHE γ線放射はパルサーの一般的な特徴であることが判明。ApJL.
ピックアップ理由: HAWCにより徐々に明らかになりつつある超高エネルギー現象、それを象徴する論文として選出しました。
ArXiv
Mildly relativistic magnetized shocks in electron-ion plasmas – II. Particle acceleration and heating
電子イオンプラズマ中の準相対論的磁気衝撃波における粒子加速/加熱を2DPIC超高解像度数値計算。Shock rippling(衝撃波の波打ち)が電子のエネルギー獲得に重要であることを初めて示した。
ピックアップ理由: 近年の技術の発展からPIC計算の高解像度化が進み、このようなすごいことまで明らかになるようになったのだなと感心したことから。
ArXiv
High Energy Neutrinos from Choked Gamma-Ray Bursts in AGN Accretion Disks
AGN円盤内で起こったGRB jetを解析したところ、円盤物質に埋もれて窒息するjetとなることが判明。Reverse shockにより宇宙線が効率よく加速、高エネルギーニュートリノを放出する。100Mpcの距離で10^53ergのchocked-long-GRBならIceCubeで観測可能。
ピックアップ理由: AGN円盤内で起こるエキセントリックなGRBジェットの進化と、さらにIceCubeでの観測可能性を示したその重要性からピックアップしました。
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Observational properties of a general relativistic instability supernova from a primordial supermassive star
55500MsunのPop-III星が起こす一般相対論的不安定超新星(GRSNe)から期待される観測特徴を研究。RHD計算を行ったところ光球温度が5000K程度、550日間もの間1.5x10^44erg/sで輝くplateau phaseがあることが判明。High-zだと数十年に渡って輝く?
ピックアップ理由: 超大質量Pop IIIの一般相対論的不安定超新星の光度曲線を計算したもの。もし存在するなら数十年にわたって明るく輝くという面白さからピックアップしました。
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HAWC observations of the acceleration of very-high-energy cosmic rays in the Cygnus Cocoon
これまではSNRや銀河中心が超高エネルギー宇宙線加速領域と思われてきたが、HAWCの観測でCygnus Cocoonと呼ばれる領域から1-100TeVのγ線を検出。これはCygnus OB2大質量星形成領域で生まれた10-1000TeVの新鮮な宇宙線によって生成されたものと考えられる。
ピックアップ理由: 1-100TeVという超高エネルギーγ線を検出したもの。大質量星形成でもこのような超高エネルギーγ線を生み出す宇宙線の生成がされていることを示した重要な論文として選出しました。
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First Detection of sub-PeV Diffuse Gamma Rays from the Galactic Disk: Evidence for Ubiquitous Galactic Cosmic Rays beyond PeV Energies
天の川銀河円盤中から、100TeVから1PeVまでのdiffuse γ線を初検出。特に398TeV以上のものは既知のTeV γ線源とは別に観測されており、これは相対論的陽子が星間物質と相互作用することにより生まれたπ0粒子崩壊からのγ線シナリオに一致。
ピックアップ理由: 1PeVにまで到達するような高エネルギーの拡散γ線成分を発見した観測。理論との一致も示されており、星間空間中の宇宙線伝搬過程の解明に大きな一歩をもたらす研究であることから選びました。
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Extended Very-High-Energy Gamma-Ray Emission Surrounding PSR J0622 + 3749 Observed by LHAASO-KM2A
LHAASOでPSR PSR J0622+3749というパルサー付近から広がった超高エネルギー(VHE)γ線源を発見。対応天体が見つかっていないことから、これはパルサーから脱出したVHE電子によるものという”パルサーハロー”シナリオに一致。Phys. Rev. Letters.
ピックアップ理由: 高エネルギー観測の躍進を象徴するような研究であることから選出しました。
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Magnetic field generation by charge exchange in a supernova remnant in the early universe
初期宇宙において部分電離プラズマ中を伝搬する超新星残骸衝撃波による磁場増幅機構。上流では中性水素だが、それが衝撃波下流でイオン化されると冷たい陽子ビームとなり、電子のreturn currentを生成。種磁場がなくても磁場の生成ができる。
ピックアップ理由: 宇宙初期のビッグバンやインフレーション時に特殊な種磁場を仮定しなくても、それを天体物理的な物理機構から生成することができる理論。そのリーズナブルさに感銘を受け、ピックアップしました。
ArXiv
Observation of gravitational waves from two neutron star-black hole coalescences
GW200105とGW200115という、2つの中性子星(NS)-ブラックホール(BH)合体からの重力波を検出。前者は8.9, 1.9M_sun、後者は5.7, 1.5M_sunの合体。ApJL.
ピックアップ理由: 連星ブラックホール、連星中性子星に続き、ブラックホールと中性子星からなる連星からの重力波を検出。重力波天文学のさらなる飛躍に期待という意味でピックアップしました。
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Beamed emission from a neutron-star ULX in a GRRMHD simulation
中性子星への超臨界降着を2.5D GRRMHD計算。降着円盤からのアウトフローによりビーム化された放射が放出されると判明。視野角の関数である見かけの等方的光度は最大で100L_EddにもなりULX(超光度X線天体)で観測される光度と一致。ApJL.
ピックアップ理由: 長い間未解決だったUltra-Luminou X-ray sourceをシミュレーションすることに成功したもの。その画期的な計算からピックアップしました。
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RAIKOU: A General Relativistic, Multi-wavelength Radiative Transfer Code
カーブラックホール周辺のブラックホールシャドウを含む画像やスペクトルの多波長研究のための、一般相対論的ray-tracing輻射輸送コード RAIKOU(来光)の開発。宇宙線研の川島さんの論文。以前からその存在は知っていたけれど、ついに論文化!
ピックアップ理由: EHTによるブラックホール直接撮像で盛り上がりを見せるカーブラックホール業界、理論と観測の比較という意味で大きな貢献をもたらすことから選出しました。ただ単に私が読んでみたいと思ったというのもある。
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Black hole flares: ejection of accreted magnetic flux {through 3D plasmoid-mediated} reconnection
超高解像度3D GRMHD計算から、magnetically arrested diskでプラズモイドを介した磁気リコネクションを計算することに成功。リコネクションにより加熱され、それがBHから脱出すると低密度のホットスポットとなる。これはSgr A*の観測と一致。
ピックアップ理由: 超高解像度計算、それだけでロマンを感じます。
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A snapshot of the oldest AGN feedback phases
LOFARにより、ある銀河群での複数世代の宇宙線AGNバブルの後期段階進化を高解像度で明らかに。バブルの浮力は銀河群内物質の放射冷却を効率的に抑制するが、磁場によりバブルは数億年経過しても完全に混合していなかった。Nature Astronomy
ピックアップ理由: 銀河団内に存在するAGNジェットでできたバブル構造、それを詳細に観測した論文。銀河団プラズマの理論に大きな影響を与える観測と判断し選出しました。
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High-entropy ejecta plumes in Cassiopeia A from neutrino-driven convection
超新星残骸Cassiopeia Aにおいて、高エントロピー核燃焼領域での合成元素である安定したTi, Crを検出。ニュートリノ加熱によって生じる対流型超新星エンジンの存在を示した。Nature.
ピックアップ理由: 超新星爆発の理解に大きな影響を及ぼす論文としてピックアップしました。
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Morphological transition of the compact radio lobe in 3C84 via the strong jet-cloud collision
電波銀河3C84(NGC1275)のコンパクト電波ローブを2016-2020年にかけて観測。2017年にはホットスポットがコンパクトガス雲とぶつかっていたが、その後またホットスポットと電波ローブが移動。FR IIからFR Iに形態が変化した。ApJL
ピックアップ理由: AGNの形態理論や観測に重要な示唆をもたらす観測であることから選出しました。
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State-of-the-art energetic and morphological modelling of the launching site of the M87 jet
GRMHD+GRRT計算によりM87 jetの電波-近赤外領域までの広帯域スペクトルを再現、同時にM87 jetのコリメーションプロファイルと一致させることができた。計算モデルからM87の無次元スピンは0.5≤a≤1.0で高いスピンが示唆。Nature Astronomy
ピックアップ理由: ブラッkホール周りのMAD(Magnetic Arrested Disk)の計算からジェットの伝搬までを計算、輻射輸送も同時に解くことで観測を再現することに成功した、スパコン計算の勝利とも言うべき研究。今後の計算機とアルゴリズムの発展への期待も込めてピックアップしました。
ArXiv
Peta-electron volt gamma-ray emission from the Crab Nebula
かに星雲から5x10^-4から1.1PeV γ線を検出。これは絶対理論限界の15%を超える加速率を持つPeV電子加速器の存在を示している。パルサー風の終端でパルスでないγ線が生成されてるとすると、加速器の大きさは0.025-0.1pc、磁場は110µG。Science
ピックアップ理由: パルサーでの粒子加速の理論に制限を与える大きな成果として選出しました。
ArXiv
統計情報
以下にarXiv/astro-phの登録論文推移を示します。
近年の登録推移
今年の月別登録推移
結言
2021年はプライベートの忙しさや体調不良などを除いて、毎日arXiv/astro-phのabstractをチェックすることができました。もちろんここに挙げたものだけが全てではありません。私が見逃したものも含めて、もし今年発表された論文で面白いものがございましたら、お教えいただけると助かります。