Table of contents
  1. 重力崩壊
    1. 圧力
    2. 中心圧力と重力崩壊
    3. 本当にブラックホールが形成されるのか?因果律の計算

重力崩壊

TOV方程式から星が重力崩壊する条件を導いてみましょう。

圧力

以下では密度一定

\[\rho = \rho_0 \ (r \leq R)\]

を仮定します。これより半径\(r\)より内側の質量は

\[M (r) = \frac{4\pi}{3} r^3 \rho_0\]

となります。
TOV方程式より

\[\frac{dp}{dr} = -\frac{\rho_0 c^2 + p}{r (r - \frac{2G}{c^2} \frac{4\pi }{3} r^3 \rho_0)} (\frac{G}{c^2} \frac{4\pi}{3} r^3 \rho_0 + \frac{4\pi G}{c^4} p r^3) \ \Longrightarrow \  \frac{1}{(\rho_0 c^2 + p)^2} \frac{dp}{dr} = -\frac{4\pi G}{3c^4} r \frac{\rho_0 c^2 + 3p}{ (\rho_0 c^2 + p) (1-\frac{8\pi G}{3c^2} \rho_0 r^2)}\]

ここで

\[\frac{d}{dr} (\frac{\rho_0 c^2 + 3p}{\rho_0 c^2 + p}) = \frac{2 \rho_0 c^2 \frac{dp}{dr}}{(\rho_0 c^2 + p)^2}\]

より

\[\frac{1}{2 \rho_0 c^2} \frac{d}{dr} (\frac{\rho_0 c^2 + 3p}{\rho_0 c^2 + p}) = -\frac{4\pi G}{3 c^4} r \frac{\rho_0 c^2 + 3p}{\rho_0 c^2 + p} \frac{1}{1-\frac{8\pi G}{3c^2} \rho_0 r^2}\]

積分を行うと

\[\ln (\frac{\rho_0 c^2 + 3p}{\rho_0 c^2 + p}) = \frac{1}{2} \ln (1-\frac{8\pi G}{3c^2} \rho_0 r^2) \ \Longrightarrow \  \frac{\rho_0 c^2 + 3p}{\rho_0 c^2 + p} = C (1-\frac{8\pi G}{3c^2} \rho_0 r^2)^{1/2}\]

星の表面\(r = R\)で\(p = 0\)という境界条件より

\[C = \frac{1}{\sqrt{1-\frac{8\pi G}{3c^2} \rho_0 R^2}}\]

と求まるので

\[\frac{\rho_0 c^2 + 3p}{\rho_0 c^2 + p} = \sqrt{\frac{1-\frac{8 \pi G}{3c^2} \rho_0 r^2}{1-\frac{8\pi G}{3c^2} \rho_0 R^2}}\]

となります。これを整理すると

\[p = \frac{\sqrt{1-\frac{r_g}{R} \frac{r^2}{R^2}} - \sqrt{1-\frac{r_g}{R}}}{3 \sqrt{1-\frac{r_g}{R}} - \sqrt{1-\frac{r_g}{R} \frac{r^2}{R^2}}} \rho_0 c^2\]

と求まります。途中、星の全質量\(M\)を用いて\(M (r)= \frac{r^3}{R^3} M\)として整理を行いました。また\(r_g \equiv 2GM/c^2\)はシュバルツシルト半径です。

中心圧力と重力崩壊

中心\(r = 0\)での圧力\(p_c\)が無限大となる条件を求めてみましょう。

\[p_c = \frac{1-\sqrt{1 - r_g / R}}{3 \sqrt{1 - r_g / R} -1} \rho_0 c^2\]

これが無限大に発散するには\(3 \sqrt{1 - r_g / R} -1 = 0\)となれば良いので、これを整理すると

\[9 (1- \frac{r_g}{R} ) = 1 \ \Longrightarrow \  R = \frac{9}{8} r_g = R_c\]

と求まります。\(R \rightarrow R_c\)のとき、\(p_c \rightarrow \infty\)となります。よって有限の圧力でこの星を支えるには、星はこの半径より大きくなくてはいけません。逆を言えば、質量\(M\)の物質をこの半径以内に詰め込むと、重力崩壊を起こして原点へと収縮し、ブラックホールを形成することがわかります。

本当にブラックホールが形成されるのか?因果律の計算

ニュートン力学より

\[\frac{d^2 r}{dt^2} = -\frac{GM}{r^2} = -\frac{4\pi G}{3} \rho_0 r \ \Longrightarrow \ \frac{R}{\tau_{\rm dyn}^2} = \frac{4\pi G}{3} \rho_0 R \ \Longrightarrow \  \tau_{\rm dyn} \simeq \sqrt{\frac{3}{4\pi G \rho_0}}\]

のように力学的タイムスケール(半径\(R\)の物質が重力収縮するのにかかるおよその時間)が求まります。先ほどの式より

\[R < R_c = \frac{9}{8} \frac{2GM}{c^2} = \frac{3 \pi G \rho_0}{c^2} R^3 \ \Longrightarrow \ R > \frac{c}{\sqrt{3\pi G \rho_0}} \simeq c \tau_{\rm dyn}\]

よって星の中心\(r = 0\)から星表面\(r = R\)までの距離は、\(\tau_{\rm dyn}\)の時間内では光の速度でも到達できない距離となっています。そのため、因果的に星内部の圧力を上げても、重力収縮を止めることはできないことがわかります。因果的に孤立したものになるので、これはブラックホールの形成を意味することもわかります。


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