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  1. 3.3 連続吸収断面積
    1. 3.3.1 連続光に対するEinstein-Milne relations
      1. Radiative transfer equation

3.3 連続吸収断面積

3.3.1 連続光に対するEinstein-Milne relations

以前考えた、2つのレベル間のEinstein relationsをBound-free 過程(電離または再結合)に拡張します。\(n_0\)を原子の数密度、\(n_1\)をイオンの数密度、\(n_e\)を自由電子の数密度とします。振動数\([\nu, \nu+d\nu]\)の光\(I_\nu\)を浴びたときの光電離確率を\(p_\nu\)と書くと、単位時間あたりに起こる電離の数は

\[n_0 p_\nu I_\nu d \nu\]

と表されます。一方で、自発的再結合確率を\(F(v)\)、誘導再結合確率を\(G(v)\)とします。ここで\(v\)は自由電子の速度(熱平衡を仮定してMaxwell分布とします)のことです。このとき、速度\(v\)を持つ電子が単位時間あたりに再結合する数は

\[n_1 n_e (v) \{F(v) + G(v) I_\nu\} v dv\]

です。ここで\(\nu\)は電離エネルギー\(\chi_I\)と電子の速度を用いて

\[h\nu = \chi_I + \frac{1}{2} mv^2 \tag{3.29}\]

のように表されるため、\(d\nu = \frac{mv dv}{h}\)の関係があります。また\(n(v)\)は\([v, v+dv]\)にある電子の数密度を表し、Maxwell分布

\[n_e (v) dv = n_e \left( \frac{m}{2\pi k_B T}\right)^{3/2} e^{-\frac{mv^2}{2k_B T}} 4\pi v^2 dv \tag{3.30}\]

で与えられます。以下では熱平衡状態を考えましょう。このとき、電離する数と再結合をする数とが同じで、\(I_\nu = B_\nu\)なので

\[n_0^\ast p_\nu B_\nu = n_I^\ast n_e(v) \{F(v) + G(v) B_\nu \} \frac{h}{m} \tag{3.31}\]

ここで\(\ast\)は熱平衡状態での値を表します。これを\(B_\nu\)について解きましょう。

\[B_\nu = \frac{n_1^\ast n_e (v) F(v) \frac{h}{m}}{n_0^\ast p_\nu - n_1^\ast n_e(v) G(v) \frac{h}{m}} = \frac{\frac{F(v)}{G(v)}}{\frac{n_0^\ast p_\nu m}{n_1^\ast n_e(v) G(v) h}-1} \tag{3.32}\]

我々は

\[B_\nu = \frac{\frac{2h\nu^3}{c^2}}{e^{\frac{h\nu}{k_B T}}-1}\]

であることを知っているので、これと(3.32)式を比較して

\[F(v) = \frac{2h\nu^3}{c^2} G(v) \tag{3.33}\] \[\frac{n_0^\ast p_\nu m}{n_1^\ast n_e(v) G(v) h} = e^{\frac{h\nu}{k_B T}} \ \Longrightarrow \  p_\nu = \frac{n_1^\ast}{n_0^\ast} \frac{h G(v)}{m} n_e \left( \frac{m}{2\pi k_B T} \right)^{3/2} e^{\frac{h\nu - \frac{mv^2}{2}}{k_BT}} 4\pi v^2 \tag{3.34}\]

ここで\(n_e\)に(3.30)式を用いました。さらに後々に導出するSahaの式から得られる関係である

\[\frac{n_e n_1^\ast}{n_0^\ast} = \frac{2g_1}{g_0} \frac{(2\pi m k_B T)^{3/2}}{h^3} e^{-\frac{\chi_I}{k_B T}} \tag{3.35}\]

を用いると、(3.34)式は

\[p_\nu = \frac{8\pi m^2 v^2 g_1}{h^2 g_0} G(v) = \frac{4\pi c^2 m^2 v^2 g_1}{g_0 h^3 \nu^3} F(v) \tag{3.36}\]

のように書くことができます。ここで\(g_0, g_1\)はそれぞれ原子と1階電離したイオンの分配関数(Partition function)の値を表します。さらに途中で(3.29)式を用いました。

Radiative transfer equation

この過程による光の吸収・発光に対するRadiative transferの式は

\[\rho \frac{dI_\nu}{dz} = -n_0 p_\nu h \nu I_\nu + n_1 n_e (v) \{F(v) + G(v) I_\nu \} \frac{h^2 \nu}{m} \tag{3.37}\]

と書けます。したがって、誘導放射により補正した吸収係数は

\[\rho \kappa_\nu = \left( 1- \frac{n_1 n_e(v)}{n_0} \frac{G(v) h}{m p_\nu}\right) n_0 p_\nu h\nu \underbrace{=}_{熱平衡} (1-e^{-\frac{h\nu}{k_B T}}) n_o p_\nu h\nu \tag{3.38}\]

のようになります。誘導放射の補正を入れないときは、1個の原子に対する吸収係数は\(p_\nu h\nu\)です。その前に誘導放射に対する補正がかかっていますが、これはBound-bound遷移のときと同じであることがわかります。ただし、Bound-free吸収は\(h\nu > \chi_I\)のときだけ可能です。このことは、(3.36)式で\(p_\nu\)が\(mv^2 = 2(h\nu - \chi_I)\)に比例することに現れています。


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