Table of contents
  1. 放射冷却
    1. 冷却率
    2. \(10^4\)K付近
    3. \(10^5-10^6\)Kあたり
    4. \(10^7\)Kより高い温度
  2. 参考文献

放射冷却

星間ガスを構成する粒子(原子や分子)は熱運動により宇宙空間を飛び交っています。 そのガス同士が衝突すると、原子に束縛されている電子のエネルギー状態が励起状態になります(衝突励起)。 ある時間が経過すると、励起した電子は安定な基底状態に戻ります。その代わりに電磁波をエネルギーとして放出します。 この一連の過程によって、ガス粒子の運動エネルギーが放射のエネルギーに変換されることがわかります。 このようにしてガスは冷却されていくのです。

冷却率

次の図は冷却率(Cooling rate)と呼ばれるものです。

放射冷却曲線

宇宙物理業界では\(\Lambda\)が数式として用いられます。なぜこのような曲線を描くのかをご説明いたします。

\(10^4\)K付近

サハの電離式から、中性水素はおよそこのぐらいの温度で電離を始めます。これは電離ができるくらいエネルギーの衝突が起こっていると考えることができるでしょう。すると電離はしないまでも、エネルギー励起状態に電子が遷移する過程も頻繁に起こっていることが予想されます。エネルギー準位間の遷移に伴う放射が活発に起こることから、この温度近傍で放射冷却が強く効き始めることがわかります。

\(10^5-10^6\)Kあたり

C, O, Ne, Feなどの原子に付随する電子も上述の中性水素と同じように励起を始めることで、それらの電子が遷移を起こし、エネルギーを放射として放出します。 よく見てみるとC(赤線)やO(紫線)にはいくつかのピークが存在します。これはC, Oなどの重元素は多数の電子を持つことから来るものです。

\(10^7\)Kより高い温度

HやHeなどの元素は完全に電離している温度です。そのため、束縛から解放された電子が自由に飛び交っています。すると自由電子が制動放射(Bremsstrahlung)を出すようになります。これにより、温度が高いほど冷却が強まります。

参考文献

  • Shure+, 2009
  • Sutherland & Dopita, 1993
  • Wiersma+, 2008


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