Table of contents
  1. X線パルサー
    1. アルヴェーン半径
    2. fastness parameter と共回転半径
    3. 平衡状態の自転周期と中性子星のリサイクル説
    4. 参考文献

X線パルサー

アルヴェーン半径

降着流が球対称であると仮定しましょう。 中心にいる中性子星の質量を\(M\)、半径を\(R\)としましょう。 中性子星が双極子磁場を持っているとして

\[B \approx \frac{\mu}{r^3} \tag{1}\]

のように書けるとします。 ここで\(\mu = B_s R^3\)は磁気双極子モーメント、\(r\)は中心星からの距離です。 すると、この双極子磁場による磁気圧は

\[P_\mathrm{mag} = \frac{B^2}{8\pi} = \frac{\mu^2}{8\pi r^6} \tag{2}\]

となります。 中心にいる中性子星への降着が定常的であり、\(\dot{M} = 4\pi r^2 \rho v\)が一定であるとしましょう。 磁気圧と降着ガスの動圧 (ram presure) \(P_\mathrm{ram} = \rho v^2\)が等しくなる半径を、\(r_M\)としましょう。 そして降着ガスの自由落下速度を \(v_\mathrm{ff}= \sqrt{2GM/r}\)とします。 すると

\[\begin{align} &\frac{\mu^2}{8\pi r_M^6} = \rho v^2 = \vert \rho v \vert v_\mathrm{ff} = \frac{\dot{M}}{4\pi r_M^2} \sqrt{\frac{2MG}{r_M}} \notag \\ &\Longrightarrow \ r_M^\mathrm{(sph)} = \left( \frac{\mu^4}{8GM\dot{M}^2}\right)^{1/7} \simeq 5.1 \times 10^8 \dot{M}_{16}^{-2/7} m_1^{-1/7} \mu_{30}^{4/7} \ [\mathrm{cm}] \tag{3} \end{align}\]

のようになります。 ここで\(\dot{M}_{16} \equiv \dot{M} / (10^{16} \mathrm{g/s}), m_1 = M/M_\odot, \mu_{30} = \mu / (10^{30} \mathrm{G \ cm^2})\)です。 \(\mu = 10^{30} \mathrm{G \ cm^2}\)は、\(B_s = 10^{12} \mathrm{G}, R = 10^6 \mathrm{cm}\)に対応します。 この\(r_M\)をアルヴェーン半径 (Alfvén radius)と呼びます。
ここで、降着ガスが重力エネルギーを解放することにより放出される光度を\(L_\mathrm{acc} = GM\dot{M} / R\)として、\(\dot{M}\)を消去すると

\[r_M^\mathrm{(sph)} = \left( \frac{\mu^4 GM}{8 R^2 L_\mathrm{acc}^2} \right)^{1/7} \simeq 2.9 \times 10^8 m_1^{1/7} R_6^{-2/7} L_{37}^{-2/7} \mu_{30}^{4/7} \tag{4}\]

のようにも整理できます。 ここで、\(R_6 = R/10^6 \mathrm{cm}, L_{37} = L_\mathrm{acc} / 10^{37} \mathrm{erg/s}\)です。
円盤降着に対しては、アルヴェーン半径は

\[r_M^\mathrm{(disc)} \approx 0.5 r_M^\mathrm{(sph)} \tag{5}\]

のように経験的に近似されます。 \(M \sim M_\odot, R \sim 10^6 \mathrm{cm}\)のような典型的な中性子星のとき、\(r_M^\mathrm{(disc)} < R\)となる臨界磁場強度を\(B_{s:\mathrm{crit}}\)としましょう。 そして\(L_\mathrm{acc} \sim 10 L_\mathrm{Edd} \sim 1.2 \times 10^{39} \mathrm{erg/s}\)とすると

\[B_{s:\mathrm{crit}} \sim 1.7 \times 10^9 \ [\mathrm{G}] \tag{6}\]

のようになります。 \(B_s < B_{s: \mathrm{crit}}\)の場合、双極子磁場が降着に与える影響は少ないと考えることができます。

fastness parameter と共回転半径

次に、中性子星の双極子磁場が、中性子星のスピン角速度\(\Omega_\ast\)と同じ角速度で共回転している場合を考えましょう。 先ほどのアルヴェーン半径より内側\((r \lesssim r_M)\)を中性子星磁気圏とし、そこに存在する物質は磁場と強く相互作用しているために、磁力線に沿った方向にしか運動できないとします。 さらに磁気圏より外側 \((r \gtrsim r_M)\)にいる降着物質は、ケプラー回転による円盤を形成しており、その速度は

\[v_\varphi \approx r \Omega_K (r) = \sqrt{\frac{GM}{r}} \tag{7}\]

であるとします。 この設定で、\(r = r_M\)で降着物質に働く力について考えてみましょう。 共回転する磁気圏から見ると、アルヴェーン半径にいる降着物質には、遠心力\(r_M \Omega_\ast^2\)が働きます。 物質が中性子星に降着するには、重力が遠心力より大きくなければなりません。 よって

\[r_M \Omega_\ast^2 < r_M \Omega_K^2 (r_M) \ \Longrightarrow \ \omega_\ast \equiv \frac{\Omega_\ast}{\Omega_K (r_M)} < 1 \tag{8}\]

とわかります。 この\(\omega_\ast\)をfastness parameterと呼びます。 外側から降着する物質の角速度が、共回転する磁気圏と同じ角速度になる半径を、共回転半径 \(r_\Omega\)としましょう。 すなわち

\[\Omega_K (r_\Omega) = \Omega_\ast = \frac{2\pi}{P_\ast} \ \Longrightarrow \ r_\Omega = \left( \frac{GM P_\ast^2}{4\pi^2}\right)^{1/3} \simeq 1.5 \times 10^8 P_\ast^{2/3} m_1^{1/3} \ [\mathrm{cm}] \tag{9}\]

ここで、\(P_\ast = \frac{2\pi}{\Omega_\ast}\)は中性子星の自転周期です。 \(r = r_M\)でガスが遠心力により離れていかないためには

\[\Omeag_K (r_\Omega) = \Omega_\ast < \Omeag_K (r_M) \ \Longrightarrow \ r_\Omega > r_M \tag{10}\]

であることもわかります。

平衡状態の自転周期と中性子星のリサイクル説

参考文献

[] 小山勝ニ, 嶺重慎, “ブラックホールと高エネルギー現象”


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